モモ缶はじまり

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あたしはお人好し
別れたはずのあの人から
ある日突然、電話


 「風邪をひいたよ」


勝手にしてよそんなモノ。


 「今誰も居ないんだ」


新しい彼女が居るでしょう?


 「……居ないんだ」


あたしはお人好し
別れたはずのあの人に
なんでだろ

あの人の好物
安いモモ缶 スーパーで3ツ
コンソメスープも作ろう スーパーで材料2人前


 「来てやったわよ」


あたしはお人好し
別れたはずのあの人の
部屋をていねいに掃除する


 「……ゴメンよ」


テーブルに並んだコンソメスープとモモ缶と

そしてあたしと別れたあの人。


 「ゴメン」


また。
謝りなんか要らないわ、
あたしが欲しいのは今日一日分の代金。


 「代金? いくら――――」


あたしはお人好し
一日費やした代金は


 ね。


あたしはお人好し
あの人の風邪 翌日治った
明日はデート。

お弁当の中には安いモモ缶
隣にいるのは別れたあの人
もう『別れた』なんて言葉は要らないね


 ホント、お人好し。


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