銀色の愛
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僕には愛する人がいます
そしてその人も 僕を愛してくれています
それはとても幸せなこと
それはとても嬉しいこと
けれど
僕の愛する人には もうひとつの幸せがあります
その幸せの中に 僕は いません
それは僕がどう頑張っても
壊れないものです
追いつけないものです
どうしたらいいだろうと
僕はこの間
彼女にそう 言いました
あなたの幸せの中に
僕がいないのが 辛いと
それほど僕は
彼女を想っていた
彼女は僕の言葉を聞くと
静かに
とても静かに
言いました
来週は
私の
誕生日よ
と
そういえば
僕の誕生日は いつだったろう
あなたの誕生日は
あさって でしょう?
私
あなたに
プレゼントを贈るわ
彼女はそう言って
笑いました
お誕生日おめでとう
二日後
彼女は
僕にナイフを くれました
彼女はただ笑っていました
危なげで儚げなナイフの光が
彼女の黒々とした瞳に重なりました
その潤んだ瞳は
僕とナイフとを 交互に見つめていました
触れば凍ってしまいそうなくらいに
冷たい色
そ う か
僕はその日のうちに
同じナイフを探しに行きました
僕の愛する人に贈るために
誕生日を祝うのが
お互いだけしかいないこと
僕はやっと 気がついた
彼女は僕の贈り物を
とても喜んでくれました
これで
二人で
幸せでいられるね
言って
彼女は笑いました
そうだね
僕もやっと 彼女と一緒に笑うことができました
そう
明日
僕らは
新聞の社会面の片隅を ひそやかに飾ろうと思います
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